最適解の重要性②

monja2004-06-13



前回の最適解の重要性①(参考リンク)で
最適解について書いたけど、
今日はちょっとした実例を、
数式を出して説明しようと思う。
デルタ航空の1200万ドルの経費削減した話は、
次にまわします。


[問題背景]
さて、この四月から某省に入省した安月給のA君は
朝食を牛乳とシリアルだけで、何とか安く済ませたい。
でも、A君は牛乳とシリアルだけで
栄養失調にならないかどうかすごく不安である。
そこで図書館に行って、最低限朝食に必要な栄養素を調べたところ

タンパク質 ビタミンD カルシウム
9グラム \frac{1}{3}RDA \frac{1}{4}RDA

であるらしいことがわかった。
次にA君は、牛乳\frac{1}{2}カップとシリアル\frac{1}{4}
当たりのそれぞれの栄養含有量を調べたところ

 タンパク質 ビタミンD カルシウム 値段
牛乳\frac{1}{2}カップ 3グラム \frac{1}{15}RDA \frac{1}{6}RDA 50円
シリアル\frac{1}{4} 2グラム \frac{2}{15}RDA なし 65円

という事実を突き止めた。
さて、A君は「朝食に最低限必要な栄養素を取る」という条件の下で
できるだけ安上がりに牛乳とシリアルを食べる場合
どれだけの牛乳とだれだけのシリアルを食べればいいのか?


[問題の主目的]
とりあえず、牛乳\frac{1}{2}カップとシリアル\frac{1}{4}袋を一単位としよう。
ここで、xを摂取する牛乳の量
yを摂取するシリアルの量とする。
今の問題の主目的は、
「どれだけ朝食(牛乳&シリアル)の値段を安く出来るか?」って事だよね?
朝食の値段をzとして
これを数式で表すとz=50x+65y
つまり、このzの値の最小化という事と
その時のxyの値を求めたいってことが、問題の主目的になる。


[問題の条件]
そして、問題条件としてまず
「朝食の最低限必要な栄養素を取る」って事なので
① 3x+2y\geq9……タンパク質は9グラム以上
② \frac{1}{15}x+\frac{2}{15}y\geq\frac{1}{3}……ビタミンDは\frac{1}{3}RDA以上
③ \frac{1}{6}x\geq\frac{1}{4}……カルシウムは\frac{1}{4}RDA以上
の3個の条件がある。


さらにA君は、
牛乳の入れすぎでシリアルがびしょびしょになるのを避けたいし
逆に牛乳が少なくてシリアルがぱさぱさしすぎるのも避けたい。
ということで、牛乳1カップあたり
シリアルは\frac{1}{6}袋以上1袋以下という条件を付け加えた。
④ 2x\leq\frac{4}{6}y……牛乳1カップあたりシリアルは\frac{1}{6}袋以上
⑤ 2x\geq4y……牛乳1カップあたりシリアルは1袋以下
と、新たに2つの条件を付け加える。


さらにもう一つ加える条件がある。
A君は牛乳とシリアルを「食べる」のであって、
「吐き出す」ことを考えなくても良いので
xyも正の数という事を条件に付けておこう。
⑥ x\geq0
⑦ y\geq0


この7つが主目的を解く上での問題条件となる。


[問題の定式化]

最小化z=50x+65y
条件3x+2y\geq9
\frac{1}{15}x+\frac{2}{15}y\geq\frac{1}{3}
\frac{1}{6}x\geq\frac{1}{4}
2x\leq\frac{4}{6}y
2x\geq4y
x\geq0
y\geq0


ふぅ、これだけ書くのは結構大変だったなぁ……。(笑)
さて、これで問題の定式化も終わったな。
あとは①〜⑦の条件式を満たしながら、
どれだけzの値を小さくできるかなんだけど
とりあえず、①〜⑦の条件をxy平面上に表したのが上の図です。
青い領域が、7つの条件を全て満たす領域ってことだね。


[zの最小化]
さて、ここで条件をすべて満たしながら
最小になるzを探さなきゃいけないんだけど
z=50x+65yと青い領域の中に、共有点のあるところが
条件を満たしていることになる。
そこで、共有点のあるギリギリのところまで
zの値を少しずつ下げてみる。(上図参照)
すると、z=197.5より小さくすると
ちょうどz=50x+65yと青い領域に、共有点がなくなるよね?
そう、このx=2y=1.5という時が
全ての条件を満たす一番安い朝食費ということになり
その値段は、z=197.5円ということになる。


これが実際の例における最適解の導出例なんだけど
問題の規模が大きくなるにつれて、かなりのおいしい話になったりする。
今の例は、たかだが数百円単位の話だけど
これが数千万とか数億単位になると、
最適解を出すだけで、今までやっていた時よりも
何百万とか何千万とかの経費削減ができたりするんだから
経営者には必須の学問だと思うよ。