ライブドアが使った資金調達方「MSCB」とは?〜その②〜



参考リンク1「こりゃおもしろい!「ライブドアニッポン放送株問題」
参考リンク2ライブドアが使った資金調達方「MSCB」とは?〜その①〜」
ということで、先日は上記の参考リンク2で
社債」と「転換社債」(CB:Convertible Bond)の説明をしたんだけど、
今日は、話の本筋である「転換価格修正条項付き転換社債
(MSCB:Moving Strike Convertible Bond)を説明しよう。


このMSCB、一言で書いてしまうと転換価格が変動するCBなんだ。
上記の参考リンク2で、CBの説明をしたけど
CBの場合、「社債」から「株式」に転換する際
あらかじめ転換価格が決まっていたよね。
ところが、「MSCB」の場合は転換価格が市場価格によって変動するんだ。
ライブドアは、この「MSCB」を利用して
リーマン・ブラザーズ証券に800億円の社債を発行し
さらに、ホリエモン所有の
ライブドア株(46720000株:発行済み株数の7.26%)を
一時的に貸す契約を結んでしまった。


一体これが何を意味するのか、
すぐに理解できる人は少ないであろう。
確かに、短期的に見れば「ライブドア」は800億円の資金調達ができ
ニッポン放送」の買収資金を確保できる事にはなるのだが、
結局のところ、セオリー通りにこのまま事態が進めば、
この「MSCB」で儲かるのはリーマン・ブラザーズ証券だけのはず。
ということで、ここからは
なぜリーマン・ブラザーズ証券が一人勝ちになるのかを説明しよう。


まず、リーマンブラザーズはライブドアの800億円の社債を購入。
そして、ホリエモンからライブドア株(4720000株)を借りる。
この時点でライブドアの株価は450円/株だったとしよう。
ここで、リーマンブラザーズがホリエモンから
一時的に借りた4720000株を売ってしまうとする。
そうすると、かなりのライブドア株が市場に放出されるよね。
すると、市場の原理からライブドアの株価は下がるわけだ。
仮にここでは、ライブドアの株価が300円/株くらいに下がったとしよう。


リーマンブラザーズは、ここで800億円分の社債
ライブドア株に転換するとしよう。
すると、300円/株という安い値段で社債を転換するために
超大量のライブドア株をリーマンブラザーズが保有する事になる。
それで、最初にホリエモンから借りた4720000株を返却。
その後、株価が400円/株まで回復したとしよう。
この時点でリーマンブラザーズが
転換した社債を再び市場に放出してしまえば、
リーマンブラザーズにとって株価の差額分(100円/株)だけ
儲けることができるよね。
(再びライブドア株は暴落してしまうだろうが)


って事はこの「MSCB」って、おそらくリーマンブラザーズにとって、
ライブドアの株価の値上がりなんて全然意味がないわけだ。
だって、積極的にホリエモンから借りたライブドア株を市場に放出して
株価を下落させればさせるほどほど、
株価の差額で利益が増える仕組みになっているんだもん。


と、リーマンブラザーズは確実に儲かるからいいんだけど
一番かわいそうなのは、
もともとライブドア株を持っていた人達だよねぇ……。
リーマンブラザーズの最後の800億円分転換した株価の放出で
相当な株価の暴落が始まるんじゃないだろうか?
ただでさえ、このところのライブドアの株価は
乱高下してるっていうのに……。(笑)


しかし、いつリーマンブラザーズは
市場に転換した株を放出するつもりなんだろう?
ひょっとして、ホリエモンとリーマンブラザーズで
「転換した株価の市場への売却は、ニッポン放送問題が決着してから」
っていうような密約でもあるんだろうか?
ニッポン放送問題が決着する前に、ライブドアの株価が暴落すれば
それこそ決着を前にライブドアがつぶれるんじゃないかと
非常に心配なんだけど……。


とにかく年商300億円程度のライブドアにとって
800億円の資金調達をするには、
MSCB」というむちゃくちゃヤバイ方法を
使うしかなかったんだろうなぁ……。