漫画:「原秀則」さんの作品がお気に入り!



原秀則さんは今もサンデー系の雑誌で、作品を連載している。
過去には、野球漫画も書いていたみたいだけど
俺は「青春期の若者の心の成長物語」を描く作品がすごく共感できて
おもしろかったなぁ。例えば
冬物語
部屋(うち)においでよ
いつでも夢を
サムデイ
とかかな?


まずは、「冬物語」から。
漫画では珍しい設定かもしれないのだが、
この話は大学浪人生の主人公の浪人模様を描いた作品なんだ。
ぜったいに合格できるはずだったすべり止めの大学にさえ落ちた主人公が
予備校で出会った東大志望の女の子に一目惚れして
自分も東大コースにコースを変更する。
しかしながら、主人公の実力では如何とも東大は難しく
途中で東大コースを挫折。
さらにその女の子には、東大生の彼氏がいた。
さぁ、主人公の恋と志望大学合格の行方は……
ってな感じの作品。
一応、かなり明るく紹介したんだけど
基本的にこの話はかなり暗いんだよね。
「勉強しても点数が上がらない現実」
「彼女に、自分と比較してとてもかなわない彼氏がいる現実」
「大学に入って何をやりたいのか見失ってしまった現実」
「ツライ浪人生活からの現実逃避」
……何か読んでてこっちが辛くなってきてしまうんだけど
大学受験が苦しかった人ほど、きっと感情移入できる作品だと思うよ。


次は、「部屋(うち)においでよ」。
主人公は、早稲田大学の男子大学生と美人ピアニストの卵。
二人の同棲生活を描いた作品なんだけど
彼の方は趣味でカメラをやってて、次第にカメラマンとして大成していく。
一方、彼女の方もCDデビューが決まり歌の世界で大成していく。
二人とも、自分の夢に向かって進んでいくのだが
「恋愛」と「夢」の両立は非常に厳しく
お互い自分の「夢」を選び、二人で同棲していた部屋を引き払うって話。
いやぁ、これも実はかなり暗い話なんだよね。
好きなんだけど、夢を追いかけているうちに
二人の距離がどんどん離れていくっていう事がすごくせつなく感じる。
物語が悲しい終わり方をしてしまい、涙無しでは読めません……。
これも似たような体験をした人は、間違いなくはまる作品なんだろうな。


そして、「いつでも夢を」。
主人公は漫画家を目指す高校生。
同じ高校の同学年で、同じように漫画家を目指す実力派の女の子がヒロイン。
彼女の方は、彼よりも先に漫画家としてデビューしてバリバリ活躍中。
彼は長い下積み時代を経て、ようやくデビュー間近。
そんな頃、周りの人間関系やセールスのための戦略から
自分の書きたい漫画が書けなくなった彼女が
職場を放棄して、彼氏の元に逃げ込んだ。
彼は彼女を守るために、一緒にいることにしたのだが
デビューのかかった作品の締め切りが刻一刻と迫り来る。
「漫画家という夢を捨てて彼女を守るか?」
「彼女を捨てて、デビューのチャンスを取るか?」
…結局彼は後者を選んだ。
漫画を書き終わってから、彼女の元に戻ると彼女はいなくなっていた。
彼は後日、彼女が自殺未遂したことを知る。
「俺は彼女よりも、漫画家になることを選んだ……」
罪悪感に苛まれる彼。
さらに彼は、この体験を漫画にしようと思いつく。
「彼女のことを考えると、これを漫画にすることはダメだ!」
「いや、この話なら……。この話なら良い作品が描ける!」
ジレンマの中、彼は涙と共に決断する。これを漫画にしようと……。
実はこの話も、かなり重い。
初めのうちは、たわいもない高校生活がこの話の流れだったのだが
上記の事件をきっかけに、「夢」と「恋愛」で板挟みの苦悩の様子が
痛いほど描かれてるんだけど
物語の終わり方としては、プチハッピーエンドで
「部屋においでよ」よりは、読み終わった後にすっきりできるかも。


最後は、「サムデイ」。
上記の3作品とは雰囲気が違って、明るく「就職活動」をネタにしている。
そういえば「就職活動」をネタにした漫画ってのも、
全然聞いたことないよなぁ……。
主人公は大学3年生。
周りの友達や彼女が真剣に就職について考え、第一歩を踏み出しているのに
一人だけ何も考えていない主人公。
さすがに「そろそろ就活やるか。」と思いつつも
全然、やりたい仕事が見つからない。
適当に大企業を受けてはいるが、当然すべて無内定。
しかしながら、ひょんなことで始めたアルバイトがおもしろくなり
どんどんバイトにのめり込んで行く。
しかしながら、そのバイト先でいろんなことを学んだり、
自分のやりたい仕事のイメージができあがり
人間的に成長した主人公は、みんなが羨む大手の大企業から内定をもらう。
ところがそこを蹴って、結局やりたい仕事ができる今のバイト先に就職する。
この作品は、終始明るく終わり方もハッピーエンドなんだよね。
この作品は、いろいろと「仕事」に対しての
意識の持ち方を考えさせられたなぁ……。
ちょうど去年の今頃、リアルタイムで就活してた時に読んでたんだよね。
だから、結構おもいれがあるんだよねぇ……。


上記の原秀則さんの4作品に共通して言えるのは
「夢」と「恋愛」なんだよねぇ。
それも大体は、「どっちかを取れば、どっちかを捨てなくちゃいけない。」
ってパターンになるんだよね。
こういう状況って、もし現実にあったら
本人にとって、かなりツライ選択になるよね。
みんな「私と仕事、どっちが大事なの?」とか
「仕事をやめて、俺のところに来いよ!」とか
彼氏や彼女に言ってない?
こういう言葉で言われると、言われた方はかなり厳しいよねぇ……。